SpaceOAR®
前立腺とは何ですか?
前立腺とは:膀胱の下で尿道を取り囲むようにあるクルミ大の臓器です。
はたらき:前立腺液を分泌し、精液の一部を作ります。


密封小線源療法とは何ですか?
小さな線源を前立腺内に挿入し、前立腺内のがん病巣へ線源から放射線を照射する放射線治療です。




SpaceOAR®システムとは何ですか?
前立腺がんに対する根治治療のひとつとして放射線治療があり、外部照射療法(IMRTなど)、密封小線源治療(シード治療)などあります。
放射線治療の場合、がんのある前立腺のみに照射したいのですが、前立腺は上に膀胱、後ろに直腸が接しているため、従来の外部照射療法では前立腺だけでなく周辺の臓器にも多くの線量の放射線がかかってしまい、また密封小線源治療(シード治療)でもある程度の線量がかかってしまい、かかったところに有害事象(副作用)が出現していました。
その一つが、直腸、膀胱の有害事象で、直腸出血、直腸粘膜の潰瘍や出血、肛門痛、下痢、膀胱・尿道への影響、勃起障害であり、まれに直腸尿道ろう(直腸と前立腺の間にろう孔ができてしまう)ような重篤な合併症が発生することがあります。
SpaceOAR®システム留置なし

(赤い部分)、直腸の合併症が出現します。
前立腺への総線量72Gy > 直腸の耐容線量60Gy
SpaceOAR®システム留置あり

直腸被曝が低減します。
放射線の影響は距離が離れれば低減します。そのため、当院では前立腺と直腸の間にゲル状の物質を挿入し、前立腺と直腸の間を1.0~1.5cm離すことで直腸被曝を低減させる処置として、『直腸周囲ハイドロゲルスペーサ・SpaceOAR®』の留置を行っています。
留置により放射線の直腸への影響が低減され、合併症が減ると考えられます。

ハイドロゲルは注入後、前立腺と直腸の間に約3カ月間スペースを維持し、その後約6カ月かけて体内に吸収されます。
SpaceOAR®システムの適応、禁忌は何ですか?
1.適応
放射線治療を受ける前立腺がん患者が適応となります。
2.慎重投与と禁忌
慎重投与
- 前立腺側方の被膜外にがんの浸潤が確認される患者
- 精嚢腺浸潤がある患者
- 出血傾向のある患者
- 重症の糖尿病患者など感染症のリスクが高い患者
- 全身状態が悪い患者
- その他、担当医の判断でSpaceOAR®システム使用によるリスクが高いと判断した患者
禁忌
- 前立腺と直腸間に強い癒着が認められる患者(本品によるスペースが適切に形成されないため)
- 前立腺背側の被膜外浸潤例、直腸周囲への浸潤例(病巣への穿刺、がんを播種させる可能性などがある)
SpaceOAR®システムの実際は?
- 前立腺と直腸の間の隙間に注射針を挿入する操作を観察できるように、超音波プローブを挿入します(図:注入前)。
- 肛門開口部より2cm上部の皮膚から注射針を挿入。超音波を見ながら、直腸尿道筋を貫通し、前部直腸壁と前立腺の間の直腸周囲脂肪組織に達するように注射針を操作します。
- 注射針の位置を超音波画像で観察し、針先が直腸周囲脂肪組織の中にあることを確認し、生理食塩水を少量注入して空間を作成。その後にSpaceOAR®ハイドロゲルを前立腺と直腸壁の間(Denonvilliers筋膜 (腹膜前立腺筋膜))と直腸前壁の間)にスムーズに連続注入します(図:注入後)。


直腸に高い線量がかからないようにします。
SpaceOAR®システムのMRI画像
矢状断面

体軸断面

SpaceOAR®システムの合併症は?
1.重大な有害事象
- 前立腺、直腸壁、直腸への針先端部の貫通やハイドロゲルの流入
- 血管内への空気、液体、またはハイドロゲルの流入
- 直腸粘膜の損傷、潰瘍、壊死
- 出血
- 局所炎症反応
- 感染症
2.その他の有害事象
- 注入による疼痛(肛門痛)、肛門周囲の不快感・便秘
- 排尿障害、尿閉
- 血栓症(肺梗塞症、深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞など)
- その他、麻酔や体位に係る合併症や薬アレルギー、非常にまれですが命に関わることも起こりえます