究極の低ダメージ肺がん手術!!単孔式胸腔鏡下肺葉切除術
胸腔鏡手術とは
胸部の腫瘍の切除手術を受ける必要があると言われた時に、気になることは何でしょうか?多くの人はどこに、どのくらいの大きさのキズがついて、どのくらい痛く、しんどい手術なのかが一番気になると思います。最近では、お腹の手術と同じく胸部の手術も小さい創部からカメラを入れて、モニター画面を見て行う内視鏡手術(胸腔鏡手術)が主流になってきました。
胸腔鏡手術はそれまでの開胸手術に比べて痛みや、ダメージが少なく、術後の回復も早い反面、高度な技術や最先端の手術器具が必要になります。そして近年では、ロボット支援下手術とともに単孔式胸腔鏡下手術が世界のトレンドとなりつつあります。単孔式胸腔鏡下肺葉切除術は、脇の下の3~4cmのキズひとつだけで、肺がんの標準術式である肺葉切除+リンパ節郭清術を行うものです。また、その技術は自然気胸や縦隔腫瘍など様々な呼吸器外科手術に応用が可能なものです。
当科では、2019年に広島医療圏で初めて単孔式胸腔鏡下手術を導入しました。これまで20名をこえる患者さんの手術経験から、カメラポートなどの数カ所の傷ができる既存の胸腔鏡下手術に比べても、さらにダメージが少なく、術後の痛みが少ないなど患者さんに大きなメリットがあると考え、現在その適応する病気を徐々に拡大しています。


単孔式胸腔鏡下肺葉切除術
Uniportal VATS lobectomy(単孔式胸腔鏡下肺葉切除術)は、2011年の上海肺科病院のスペイン人医師Diego Gonzalez-Rivas氏の報告に端を発し、近年の医療機器の進歩ならびに低侵襲手術への移行により、アジアから世界に広まりつつあるReduced port surgeryの1つです。文字通り数cmの1つのポートのみで胸部手術を行う方法であり、カメラ、道具類の軸、これらの干渉を考慮しながら手術を進めるため、専用の鉗子や屈曲した吸引管を用います。この吸引管で組織に緊張をかけながら剥離や切離を行うnon-grasping techniqueが基本となります。

(小さな穴1個で手術が可能)

単孔式胸腔鏡下手術の利点として、手術における必要悪である開胸創が極力小さくできること、術後の痛み止め使用期間や肋間神経痛が少ないことなどが挙げられますが、実際に手術を行って感じる重要な利点としては、単孔を前腋窩線上に置き、肺門に潜り込む形で重要血管に直接的にアプローチ可能であり、エネルギーデバイスを血管に対して接線方向で安全に扱えることから、開閉胸の時間短縮と相まって非常に効率的な手術が行える点が挙げられます。
本場の中国や台湾では、複雑区域切除や気管支形成、肺動脈形成などの難易度の高い術式にも適応されており、さらに気管内挿管を行わず肺切除なども行っているようです。日本ではまだそこまで行っている施設はありませんが、最新のアプローチ方法であるため今回、導入には手術見学、ブタ臓器を用いたドライラボ、他病院とのビデオカンファレンスやウェブ会議などを通して修練を行いました。今後上海肺科病院で短期研修を行い、ノウハウを蓄積したうえで他施設への啓蒙活動も行う予定です。
