大腸がんに対するロボット手術
ロボット手術とは?
手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、人間の手の代わりの役割をするアームを4本持っており、そのアームにお腹の中を観察するカメラ、お腹の中を操作する鉗子を付けることができます。術者は挿入したカメラからの映像をコンソール(ロボットを操るコクピット)の中で見ながらロボットの鉗子を動かし手術を行います。カメラ先端には2つのレンズが装備されており、お腹の中の映像が拡大され鮮明な3次元(3D)画像として映し出されます。術者は、その映像を見ながらコンソールに座ってリラックスした姿勢で手術をすることができます。



ロボット手術って何が良いの?
術者が直接鉗子を握らないので手振れもなく、手首(リスト)や多関節をもった自由な動きが可能な鉗子で繊細な操作が可能です(図1)。数カ所の小さな穴の切開部から手術を行うため(図2)、傷が小さく、傷の痛みも軽く、手術後の回復が早く、患者さんの負担が軽減されます。


ロボット手術が有用な手術って何?
2018年から直腸がんに対するロボット支援直腸切除術が保険収載されました。大腸の中でも最も肛門側に位置する直腸は、骨盤内にある大腸になります。
その直腸を切除するには、狭く奥深い骨盤内での操作が必要となるため、従来からある腹腔鏡手術では、使用する鉗子は直線的な動きしかできず、狭い骨盤内での操作は時に難渋します。それに対して、ロボット手術では狭い骨盤内で鉗子を自由に動かせるので、繊細で正確な操作ができます。そのため、直腸がんの術後合併症の一つである神経障害(排尿障害や性機能障害)の発症を少なくすることができ、また、手術中の出血も少なくすることもできます。肛門を温存できるか悩ましい、非常に肛門に近い直腸がんを切除する場合、特にロボット手術の有用性は増します。
直腸がんと診断された際には、手術のために紹介してもらう病院でロボット手術が受けられるかどうか担当の先生に尋ねてみてください
大腸がんに対するロボット支援手術の適応
1990年代に米国で手術支援ロボット(ダヴィンチ・サージカルシステム)が開発され、本邦でも2018年4月から、直腸がんに対するロボット支援手術が保険適用となり急速に普及しています。さらに、2022年4月から、結腸がんに対してのロボット支援手術が保険適用となりました。当院でも、全ての大腸がんをロボット支援手術の適応として積極的に行っています。
従来の腹腔鏡手術に対するロボット支援手術のメリット
- カメラ・鉗子すべてを術者1人がコントロールするため安定したカメラワークで効果的な術野展開ができる。
- ロボットのアームによる安定した力で多方向への組織の牽引ができる。
- ロボット鉗子の多関節機能により多方向から組織に手振れなくアプローチできる。
大腸がんに対する手術は、大まかに1.腸管と腸間膜を周囲の温存する組織から外す剥離操作、2.腸に血流を送っている血管処理、リンパ節摘出の2つのパートから成ります。
直腸がん手術では、1のパートで注意を要します。温存する組織として下腹神経・骨盤神経があり、それら神経を損傷または誤って切除してしまうと、術後に永続的な排尿/性機能障害の合併症が生じます。特に、肛門に近い下部直腸がんの場合は狭い骨盤深部の空間での剥離操作が必要で、ロボット支援手術はそのような場面で温存する神経の同定が確実にでき、剥離もやりやすく非常に威力を発揮します(画像1)。

ロボット支援手術では、従来型の腹腔鏡手術に比べ術後の排尿/性機能障害の合併症が減るということが報告されていることに、実際に手術をしていて納得します。
結腸がん手術(特に上行結腸・横行結腸がんに対する結腸右半切除術)では、2のパートで注意を要します。血管走行にバリエーションがあり、処理する血管の同定が困難であり、一旦処理する血管から出血すると、止血に難渋し大量出血する場合もあります。ロボット支援手術では多関節・手首を有する鉗子で血管に多方向からアプローチでき、血管を同定しやすく出血なく安全に処理することが可能で(画像2)、そのことは精緻なリンパ節の摘出につながり、がんの予後向上に寄与できる可能性があります。

医療従事者の方へ
直腸がんの中でも、肛門を温存できるかどうか悩ましいような肛門近傍の下部直腸がん、上行結腸・横行結腸がんにこそロボット手術が有用ですので、そのような患者さんがおられましたら、当院にご紹介ください。
