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妊娠と薬の話 ~妊婦さんは薬を飲めないの?~

妊婦さんとお薬について

風邪を引いたけど妊娠中なので薬を飲まなかった方はたくさんおられます。それは胎児への影響が全くない安全とされる薬剤がほとんど無いからです。薬の添付文章では多くの薬剤は有益性投与、つまり投与が胎児へのリスクより母体に有益であると考えられる場合の投与とされています。これは妊婦での研究が倫理上できないからです。

では、妊婦さんは薬を使えないのでしょうか? 次の点をご理解いただき、過度に心配する必要はありません。しかし、内服する場合は自己判断せず医療機関にご相談の上ご使用ください。

まず、多くの妊婦さんが心配されることは、薬を飲んだら赤ちゃんが奇形になるのではないかです。ヒトの出生時に確認できる形態異常の頻度は3~5%とされています。(産婦人科診療ガイドライン2017産科編より)薬の影響はこの数字を上回る場合で、そのような薬剤は使用禁忌とされています。大切なのは、胎児への薬や放射線などの影響は時期により大きく異なる点です。妊娠時期により以下の時期に分けられます。

妊娠時期と薬の影響
All or noneの時期~妊娠3週末
この時期は月経が遅れなどで妊娠に気づく時期です。
この時期はまだ細胞分裂の時期であり、奇形として残らないとされています、万が一障害があってもそれは流産に終わると考えられています。
器官形成の時期妊娠4週~12週
産婦人科で妊娠が判明し妊婦健診が始まる時期です。
この時期に胎児の各臓器が形成されます。薬剤によってはこの時期の投与により奇形を残すことがあり慎重な投与が必要です。
胎児機能障害のある時期妊娠13週~
胎児が成長し臓器も成熟してくる時期です。この時期には奇形を起こすことはありませんが、薬によっては母体には薬(有益)でも胎児には悪影響(胎児毒性)を起こす薬剤が知られています。

妊婦さんの薬物療法について

日常の診療において妊婦に処方する機会のある薬剤について、一般的なことを紹介します。

1.抗菌薬
  • 比較的安全、先天異常発生リスクが大きく上昇しないとされている薬剤
    ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系、ニューキノロン系
  • 避けるべき、先天異常が報告されている薬剤
    アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系
2.解熱鎮痛剤
  • 比較的安全、先天異常発生リスクが大きく上昇しないとされている薬剤
    アセトアミノフェン
  • 注意して使用すべき(妊娠後期の使用で胎児動脈管の閉鎖の可能性がある)
    NSAIDs
3.胃薬
  • 比較的安全、先天異常発生リスクが大きく上昇しないとされている薬剤
    メトクロプラミド、スクラルファート、水酸化アルミニウム配合剤、H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬
4.抗アレルギー薬
  • 比較的安全、先天異常発生リスクが大きく上昇しないとされている薬剤
    局所投与:クロモグリフ酸、ケトチフェン、外用薬一般
    第1世代抗ヒスタミン薬:クロルフェニラミン、クレマスチン
    第2世代抗ヒスタミン薬:ロラタジン、セチジリン、デスロタラジン、レボセチリジン
5.喘息の妊娠中の管理
  • 吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン薬、
    抗トルエン薬、抗ヒスタミン薬(上記)
6.降圧剤
  • 妊娠中は使用を控えるべき薬剤
    アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)
7.糖代謝異常の管理
  • 食事療法+インスリン療法
8.甲状腺機能亢進症
  • プロピルチオウラシル(PTU)
    チアマゾール(MMI)は催奇形性があるため使用を避ける
9.ステロイド(容認)
  • プレドニゾロン:胎盤通過性がほとんどないため

精神疾患や基礎疾患などがあり安全性が確認できない薬をやめられない症例がある場合

平成17年10月より国立成育医療センター内に「妊娠と薬情報センター」が設置され相談可能です。広島では広島大学病院が窓口になっています。世界的に症例を集積しているトロント大学のデータベースに基づき情報を提供してくれますので、症例があればご相談ください。

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