遺伝性乳がん卵巣がんを知っていますか?
がんの遺伝子?
2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「自分は乳がん遺伝子を持っているので予防的乳房切除を受けました」と公表し大きな話題を呼びました。このニュースで「乳がんの遺伝子って検査できるの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
がんは遺伝性要因と環境要因、両方の要素が組み合わさって発症します。この遺伝性要因の一つ、BRCAという遺伝子に変異があった場合にはその人は50~80%の確率で乳がん、20~40%で卵巣がんを発症することが分かっています。そしてその遺伝子は親から子へ1/2の確率で受け継がれますので、この家系は乳がんと卵巣がん患者さんの多い家系となります。他にも前立腺がんや膵がんの発症リスクが上がるとされています。
何やら恐ろしい遺伝子に思えるかもしれませんが、これは病気が解明されてきたということです。「よくわからないけどがんが多い家系」だったのが「この家系のこの人は乳がん・卵巣がんにかかりやすいので対策が必要」と医学的な対応を打てるようになったのです。アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的乳房切除も然り、乳がん検診や前立腺がん検診といった対応もそうです。
遺伝子の検査と遺伝カウンセリング
乳がん患者さんの3~5%がBRCA遺伝子に変異を持つ遺伝性乳がん卵巣がんに該当すると言われています。ご家族に乳がんや卵巣がんの方がおられたり、若いうちの発症だったりする場合には、この春からBRCAの遺伝子検査が保険診療でできるようになりました。検査は採血するだけの簡単なものですが、詳しい説明と今後の対応を検討する「遺伝カウンセリング」の時間を事前にとらせてもらっています。

この検査は乳がん、卵巣がんなど一部のがんにのみ対応したもので、また、乳がん、卵巣がんのすべての遺伝子変異を見ているわけでもありません。がん発症を遺伝子から予測する技術はまだまだ限られたものですが、どのように利用して医療現場で応用するか、よく考えていかないといけません。
遺伝子検査の対象となる人(抜粋)
- 乳がんを発症し、以下のいずれかに当てはまる
□ 45歳以下の乳がん発症
□ 60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
□ 2個以上の乳がん
□ 第3度近親者内に乳がん又は卵巣がん発症者がいる - 卵巣がん、卵管がん、腹膜がんの発症
- 男性乳がん

Q1.もしもBRCA遺伝子の変異が陽性だったら?
1.自分の健康管理のために
- 乳房・卵巣の定期検診を受ける。
(乳房はMRI検査を行う、卵巣は腫瘍マーカーを併用するなど、通常と方法が異なります。男性は前立腺がん検診も推奨されています) - 予防的乳房切除、卵巣切除を考える。乳房温存術が可能でも乳房全摘を考える。
2.家族のために
ご家族の方には遺伝子検査の結果をお伝えすることをお勧めしていますが、お子さんにはある程度大きくなってからでもよいと思います。ご家族で遺伝子検査を希望される方がおられた場合には、改めてその方に対する評価・カウンセリングを行います。
Q2.がんゲノム医療とどう違うのですか?
どちらも「遺伝子を調べる」という共通点がありますが、調べる対象が違います。がんゲノム医療の場合はがんそのものの遺伝子を調べますが、がんの遺伝子は患者さんの体の遺伝子から変化していることがあるので遺伝するとは限りません。BRCA遺伝子検査はその人の体の遺伝子を血液で調べますので、がんが治った後もBRCA遺伝子は影響します。がんゲノム医療はがん細胞そのものをみる検査、BRCA検査は患者さん側をみる検査と言えそうです。
Q3.乳がんの治療のために遺伝子検査を行うことがある?
進行・再発乳がんの人に使う分子標的薬で「オラパリブ」という薬剤がありますが、BRCA遺伝子変異のある人にのみ有効という特徴があります。「オラパリブ」を使う際には、家族に乳がんの人がいるかどうか関係なくBRCA遺伝子検査を行い、変異のある人にのみ使います。
Q4.どこで遺伝子検査を受けられますか?
遺伝性乳がん卵巣がんの診療を目的としてBRCA遺伝子検査をできるのは、遺伝カウンセリング体制の整った病院か、そこに連携した病院に限られています。また、遺伝子検査を受けるには発症したがんの情報が必要なため、まずがんの治療を受けた病院へ相談してください。(当院の遺伝子検査は、当院でがんの治療を行った方を対象としています)
