こどもの股間(外陰部)の病気は誰が診る?
こどもの股間(外陰部)の病気は誰が診る?
小児外科では男児女児問わず、子供の外陰部に生じる疾患を多数診ます。男児だから泌尿科医、女児だから婦人科医が診るわけではありません。またこれをご存じない方も多いように感じます。小児外科は頚部、胸部、腹部等、小児の全身を診療する診療科ですが、実際に股間(外陰部にある疾患群)は診療の半数は占めると思います。少し解説します。
男児女児問わず多いのは『そけいヘルニア』です。足の付け根をそけい部といいますが、この部分に先天的に袋があり、内臓が脱出する疾患です。成人とは異なる手術術式を行います。

男児の場合は精巣に関与する疾患があります。停留精巣とは精巣が陰嚢内に下がっていない疾患で、不妊等の原因となりますので、手術が必要です。ただし、移動性精巣という疾患と区別が難しいこともあり、専門医の診察を勧めます。精巣が大きいといってこられる患者さんもおられますが多くは陰嚢水腫といって、精巣周囲に水がたまっている疾患です。
多くは自然治癒しますが、手術が必要なこともあります。しかし、この中にはまれに精巣腫瘍が含まれることがあり、自己判断はおすすめしません。精巣の痛みで来られる患児は急性陰嚢症といいます。この中には精巣捻転という精巣が壊死(くさる)する疾患があるので正しい判断を早期に行わなくてはなりません。そのほかにも精巣上体炎等、手術が不要な疾患もありますので正しい判断を要します。
ちんちんの疾患として多く相談されるのは包茎です。しかし幼小児では正常な状態であり手術を要することはほぼありません。内科的治療を行います。なお当院では宗教的な希望による包茎手術はしていません。尿道口の位置が正常でない尿道下裂という疾患もありますが、これはちんちんが曲がっていることが多く、修正が必要です。外尿道口に腫瘤がある外尿道口嚢胞にも対応しています。また埋没陰茎という、一見、ちんちんがないように見える病態もあります。

女児では、乳児期に膣がないといって受診される陰唇癒合症があります。これは表面だけの問題ですので、外来での剥離処置で治癒します。しかしまれに本当に外陰部が閉鎖していて手術が必要な鎖陰の患者さんも含まれますのでその知識は必要です。また女児尿道部分に先天的な腫瘤があり治療を要する傍尿道嚢胞があることがあります。
女児で、ご承知いただきたいのは、外傷の患児です。会陰部の外傷(裂傷)は以外と多く、風呂場やプール等で発症しています。このような病態を診察しているのは婦人科医ではなく小児外科医です。他院から“こどもだから診察できない”、といって紹介されることもあり、外陰部の診察になれている小児外科医が治療に適任と考えます。
股間のお悩みはどこに相談したらいいか悩んでいる親御さんは多い印象があります。股間以外にお尻も含め、小児外科で診察治療していることをご承知いただければ幸いです。
そけいヘルニア診療および小児泌尿器科診療
当科では以前より、小児そけいヘルニア診療とともに、小児泌尿器科診療を手がけてきました。そけいヘルニアは、創部の整容性に配慮した前方アプローチによる開放手術を行っています。入院期間は以前は3日間でしたが、現在は2日間に短縮しています。
小児泌尿器科診療は多岐にわたりますが、手術数が多いのは停留精巣です。腹腔内精巣では腹腔鏡手術を行いますが、ほとんどの症例は通常の前方アプローチで完遂します。入院期間も以前は4日間でしたが、現在3日間に短縮しました。
急性陰嚢症は小児泌尿器科領域では数少ない緊急疾患ですが、当院麻酔科、手術室の協力もあり、待機時間の少ない治療を行っています。発症後6時間以内での手術が精巣の救済率を上げることが知られており、できるだけ早期の紹介をいただければ成績も良くなると思います。
急性陰嚢症の精巣捻転



(精巣捻転)

(精巣捻間捻転)
また、最近10数年来、尿道下裂手術の工夫と改善を行い、手術症例も増加し、手術成績も良くなっています。術中術後管理にも工夫し、手術器具もマイクロサージェリー用に変更しました。ただし、尿道下裂手術は難しい手術として知られており、まだまだ改善を試みている状態です。

小児そけいヘルニアや小児泌尿器科疾患は外陰部の視診で診断に至れることが多い病態です。小児科の先生方、検診や診察時に患児の“股間”になにかご心配な状態がありましたら、当科に紹介・相談いただければ幸いです。
