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肺がんのがんゲノム医療

肺がんについて

がんは国民の二人に一人が生涯に一度は患う病気であり、国民の生命と健康にとって重大な問題です。肺がんは様々な“がん”のなかでは、完全に治ることが難しいがんの一つですが、近年の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害の臨床応用に伴い、治療成績が劇的に向上しております。

がんゲノム医療とは

がんは、正常な細胞の遺伝子が変異し、その変異した遺伝子が増殖して発症します。遺伝子の変異は、生活習慣や喫煙等が原因となる後天的な要因や、先祖から受け継ぐ遺伝が原因となる先天的な要因によって、発生します。現在では、患者さんの体からがん組織を採取し、その遺伝子を調べることによって、そのがんの特徴を知ることができるようになりました。そして、同じがんの種類であっても、患者さんごとに発生する遺伝子の変異は異なり、対応する薬剤も異なることが分かっています。

がんゲノム医療とは、患者さんごとに異なる遺伝子の変異を調べて、患者さんにより適した治療薬の情報をご提供する新しいがん治療です。肺がんではがんゲノム医療が進んでおり、進行・再発肺がん患者さんには、遺伝子変異検査とPD-L1免疫組織化学染色検査を行い、患者さんごとに最も適した治療を行っております。

  • 原因となる遺伝子はさまざまであり、対応する薬剤も異なる。
  • ゲノム医療では、原因となる遺伝子を特定し、より効果が高い治療薬を選択することが可能。

遺伝子パネル検査について

現在、肺がんの日常診療で行われている遺伝子変異検査(コンパニオン診断)では、一度に調べられるのは1つの遺伝子異常のみであり、複数の遺伝子を検査するには時間と費用がかかることが問題です。一方、遺伝子パネル検査は、一度に複数の遺伝子変異を検出可能な次世代シークエンサーという機器を用いる新しい遺伝子診断方法です。

この遺伝子パネル検査の結果で推奨される薬剤には、保険診療が適用される一般の抗がん剤や分子標的治療薬に加えて、現在臨床研究中の薬剤や保険適応外の薬剤が含まれます。そのため、遺伝子パネル検査を行っても、現状では治療につながる割合は10パーセント程度と考えられます。

がんゲノム医療に適した検体の採取

肺がんの確定診断等は気管支鏡検査・CTガイド下生検・リンパ節生検・胸腔鏡下肺生検などで行いますが、気管支鏡検査ではがんゲノムパネル検査に適した十分量の組織が採取できないことが課題です。

当院では2019年3月に広島県で初めてクライオバイオプシー(凍結生検)を導入しました。クライオバイオプシーとは、気管支鏡下にクライオプローブを目的部位まで到達させ、組織を凍らせて採取する新しい方法です。従来の気管支鏡検査に比べて採取組織を凍結させることで、挫滅の少ない、より大きな組織が多く採取できるために肺がんの診断率が高く、がんゲノム医療に適した検体が採取可能になります。また、放射線診断科、呼吸器外科、臨床研究検査科と連携して、血管造影CT複合型装置(IVR-CT)を用いたCT下生検、リンパ節転移の生検など、患者さんに最も適した方法で十分な量のがん組織を採取するように心がけでおります。

分子標的治療薬

当院では肺がん組織を用いて、EGFR遺伝子変異検査、ALK融合遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査、BRAF遺伝子変異検査を行い、がん細胞に特徴的な分子を狙い撃ちする分子標的治療薬を適切に用いるプレシジョンメディシンを、すすめております。分子標的治療薬は治療開始後早期に劇的な腫瘍縮小効果が現れることが特徴です。肺がんの領域ではゲノム情報により、分子標的治療薬が無効例への投与が回避され、有効性が上昇した結果、治療成績が大幅に向上しております。さらに、がんゲノムパネル検査も積極的に行うことを心がけているために、より効果的な治療の選択が可能になります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃れようと免疫細胞(T細胞)にかけたブレーキを解除して、体内にもともとある免疫細胞を活用する薬剤です。免疫チェックポイント阻害薬の治療効果はゆっくりですが、一旦効くと治療効果が長続きすることが特徴です。

近年では、肺がんの一次治療に新たな選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用が可能になり、肺がん患者さんの予後が改善することが期待されております。免疫チェックポイント阻害薬は従来の抗がん剤とは異なる免疫に関連した多様な副作用が起こりますが、当院では副作用に対応するために院内連携を強化しております。

《医療機関関係者へ》

当院はがんゲノム医療連携病院に指定されており、保険適用された遺伝子パネル検査が実施可能です。検査を希望される患者さんがおられる場合は、当院HPの紹介手順を参考としてください。

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