骨盤臓器脱について
Q.骨盤臓器脱とは何ですか?
- 骨盤内にある臓器 (子宮、膀胱、直腸)を支えている靭帯、筋膜などの支持組織が弱くなって骨盤内臓器が膣内外に下垂してくる病気です。
- 下垂・脱出してくる臓器によって子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤などと呼ばれていました。これらが単独または同時に出現してきます。
- 近年では骨盤臓器脱と総称されるようになっています。
Q.骨盤臓器脱の原因は何ですか?
- 出産や加齢、婦人的手術などで、子宮、膀胱、直腸などの臓器を支えている骨盤の底の筋肉や靱帯が緩むことが、骨盤臓器脱の原因です。
- 過度の腹圧が慢性的にかかることで骨盤の底の筋肉や靱帯が緩みます。
- 慢性的な咳や習慣性の便秘
- 重い荷物を持つなどの労務、仕事
- 肥満
- 多産
- 加齢
これらが危険因子と考えられています。
Q.骨盤臓器脱は多く認める疾患ですか?
- 欧米では経膣分娩を経験した女性の約3割に、スウェーデンでは出産を経験した女性の44%に骨盤臓器脱がみられたと報告されています。
- 米国女性の11.1%が80歳までに骨盤臓器脱か尿失禁に対して手術を受けると報告されています。
- 骨盤臓器脱の症状で困っても、恥ずかしい、治療法がない、どこに受診すればいいか分からない理由で、一人で困っている人は多いと考えられます。
Q.骨盤臓器脱にはどのようなものがありますか
いままでは下垂・脱出してくる臓器によって膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤などと呼ばれていましたが、近年では骨盤臓器脱と総称されます。


Q.症状にはどのようなものがありますか?
- 下腹部や膣の中に“何か”が降りてきたような違和感、会陰部に“何か”触れる、歩行や排便時など腹圧がかかった時の下垂感、不快感、立っていると頻尿になり、トイレに間に合わなくなるなどあります。
- これらの症状は一般的に午前中よりも活動した午後に多くみられます。
- 進行すると、次第に尿や便が出しにくくなります。さらに膣壁が下着にすれて出血し、歩行も困難となります。
Q.治療はどのようなものがありますか?
- 薬物療法は無効で、治療の原則は手術療法となります。
- 脱出が軽度の方や手術希望のない場合、対症療法としてリングペッサリーがあります。
※リングペッサリーとは?
膣内に挿入する補助的な矯正器具です。3~4ヶ月毎に定期交換します。合併症として、膣炎、出血、帯下の増加などあります。


Q.手術の適応は何ですか?
- 命を脅かす病気ではなく、気にならなければ危険を冒してまで手術を受ける必要はありません。また、予防的手術などは全く不要です。
- 手術した方がよい場合
- 排尿困難や排便困難が強い場合
- 膣や子宮頸部にびらんや出血がある場合
- 水腎症のため腎機能低下の可能性がある場合
- 生活の質(QOL)が低下し、日常生活や心の健康に問題が生じる場合
これらの場合、症状や健康の回復のため、早期手術が望まれます。
Q.手術治療はどのようなものがありますか?(1)
膣式子宮全摘術+前後膣壁形成術
- 膣式子宮全摘術+前後膣壁形成術:膣から子宮を摘出し、膀胱と膣の間の筋膜および直腸と膣を支える筋肉を縫い合わせて補強する術式です。
- 今でもわが国では多くの施設で実施されています。
- 縫い合わせて補強する方法はもともと傷んでいる組織を使うため30~40%の再発率があり、また子宮を摘出することも必要となります。
- 新しい術式として緩んだ筋膜や靱帯の代わりに人工の素材を用いて補強するメッシュ手術(TVM手術、腹腔鏡下仙骨膣固定術)が開発され、主流になってきています。
Q.手術治療はどのようなものがありますか?(2)
TVM手術
TVM手術:骨盤臓器脱の原因は支持する筋膜や靱帯 が弱くなることですから、それらを補強することが本来の治療です。本手術は、緩んだ組織の代わりにメッシュを用い、ハンモックのように支える手術です。十分な強度をもつ、薄く、柔らかいメッシュを使用します。
※メッシュとは?
人工素材のポリプロピレン(プラスチックの一種)を網状に縫い込んだ医療材料。鼠径ヘルニア手術などで広く使われています。


Q.TVM手術の合併症はどのようなものがありますか?
- 出血や近接臓器損傷、メッシュ関連が主です。
- 500ml以上となる出血はまれで、1%程度です。
- 近接臓器損傷で多いのは膀胱損傷で、次が直腸、尿管損傷です。直腸損傷の場合、人工肛門となることもあります。
- メッシュの合併症には、メッシュ露出・びらん、感染症、疼痛、性行痛、腹圧性尿失禁、残尿、尿閉、排便障害などあります。
- TVM手術後の再発の頻度は低いと考えられています。
Q.TVM手術の保険適応や入院期間、術後の注意点
- TVM手術は健康保険の適応です。
- 当院での入院期間は7~10日程度ですが、希望者は、早期退院も可能です。
- 術後にメッシュが周囲の組織となじみ、固定するまでに過剰な腹圧がかかるとメッシュがずれる可能性があります。術後は腹圧をかけない、心身ともにゆったりとした生活がメッシュの定着を確かなものにします。腹圧がかかる家事や労働、動作、便秘は控えましょう。